「このリング、安ーーい!」
社会人になりたて一年目の春、会社の同期のその一言を聞いて、渋谷パルコの店頭で固まったことを今でもよく覚えている。
イオッセリアーニ(Iosselliani)のCLASSIC COLLECTION「Alba」8連リング。IOSSELLIANIの代表作「スタックリング」。パズルのピースをイメージしデザインされたとのこと
一つ一つの造形が絶妙に違うので重ね付けでもいいし、単体使いしてもいい。いぶし加工で、カッコよく、男女兼用で楽しめるアイテム。

そもそもこのリングを初めて見たとき。8本のセットとはいえ、40,000円程度だったと記憶している(当時の値段)。
大学生の頃、ファッションに使った金額なんて、本当に安い駅ビルや近くの大きなショップでしか買ったことがない女子だった。だから、ほとんど2,900円とか3,980円とか端数のお洋服しか買ったことがなかった。さらにどちらかというと、“モテ系”で可愛らしいフェミニンな感じが好きで、いわゆるコンサバ女子だった。
当然指輪だってブランドものを買ったこともない。親もアクセサリーを一切つけないので、身近になかった。
だから、1,000円とか、それくらいのジルコニアがキラキラ光る可愛らしい雑貨屋さんで売っているようなアイテムしか、私はほとんど持ったことがなかったように思う。(それもときめいて、好きなんだけど)。
さて、そんな私にとって、イオッセリアーニにはいろいろな意味で人生で出会ったことのなかったリング。
そもそもそんなリングが40,000円を越えるものが安いなんて思えないし、少しくすんだシルバーの味があるアイテムは、当然”かわいい”とはほど遠く、ユニセックスでかっこいい。きっと私と正反対の位置にあったリングだと思う。
安いねと言われた後に、そうだねと答えながら「やばい、私、入社する会社間違えたかも」とサーっと不安がよぎった、そんな社会人1年目の春のことだった。
* * *
数年経って私はなぜかこのリングが無性に欲しくなった。そして、ボーナスが出たあたりで買いに行った。
ちょうど人差し指と中指につけられるサイズを買って、そこから2つ、3つを重ね付けしてつけてみる。それが、はじめてのイオッセリアーニデビューだった。

大学のゼミの同期たちに会うときに、このリングをつけていったら、「何か武器みたいだね」と大真面目な顔で言われて、思わず笑った。
でも、私にとってこのリングは、武器であり、お守りだったのかもしれない。
それからしばらく、会社の外に活動の幅を広げていって、外の世界を覗くような時間がどんどん増えていた。その時には必ず、私の中指にはイオッセリアーニのリングが添えられていた。
…やっぱり、武器だったのかもしれない。
リングは、今もまだ変わらず、私の手元にある。
どことなく気のせいかもしれないけど、1度につける本数は少し減った(というか、8本あったはずなのに…若干本数まで減ってしまった)。そして、その頃から約10年。
リング単体でつけるよりも、他のお気に入りのリングと揃えて使ったり、重ね付けして使ったりするようになった。
買った頃は、きっとどこか背伸びさせられている雰囲気もあったかもしれない。けれど、10年経っても変わらず、手元にある。このリングは、私がファッション関係の仕事に入ったときの思い出のリングであり、なんだか最初の戸惑いと苦い気持ちと、それでも手放さずに歩んできた。そんな軌跡を思い出すアイテム。
自分と、そして、まだ見ぬ何かと、戦うために。
懐かしい私の武器であり、思い出のリングでもある。
きっと、あの頃よりは似合っているだろう。
